最近話題のバルミューダの創業物語。
あの心奪われるデザインの家電製品たち。
トースター、炊飯器、電気ケトルなど、どれも家電製品の枠を超えて美しい。
これらは根っからの技術者、デザイナーがつくり出したのではない。
才能もお金もない熱いというか、必死になれた男がつくり出したものなのだ。
とても興奮する一冊だった。
確かにサクセスストーリーだが、より身近に感じる。
ものづくりのお話で数多く目にするスティーブジョブズのApple物語とは大枠は似ているようだが、確かに違う。
彼には溢れるばかりの才能はないのだ。
寺尾氏のことを表現すると
泥臭くて、カッコいい。
ロックだ。
昔、ロックだ、という言葉の意味を考えたことがある。
私の答えは、一般的なものの見方、尺度からするとカッコ悪いとか、ダサいということかもしれないが、何かカッコ良さや、自分を貫いている、スタイルを持っていることかなと思っている。
寺尾氏はまさにそんな人だ。
その時のカッコ良いや、熱くなれるものに必死になれる。
彼の人生は決して順風満帆ではない。両親からの影響、荒れた青春期、一人旅、売れないロックミュージシャンとしての10年。この本の約半分がバルミューダ設立前のエピソードだ。
彼の若かりし日々はまさに自分の気持ち良いことへの追求、多くの失敗、挫折、そして思い通りにいかない人生。それは一見マイナスのことではあるが、決して無駄ではないことを教えてくれる。
その教訓とは何か、それは気づきだ。
おそらく彼が20代でバルミューダを立ち上げていたのなら、決して長くは続かないだろう。もちろんその素質はあるのだが。
経験を経て、彼は自分が表現することで、どうしたら人を幸せにできるのかに気づけるようになったのだ。
自分が気持ちよくなる曲が良い曲であると思っていた彼は、自然と人を気持ちよくする曲を書けるようになったのだ。
この本は会社の起業や経営のスリル感も感じることができるのだが、人の成長も感じる興味深い本だ。
人は何にでもなれる。