ライカ M3は美しい。
見ているだけで時間を忘れられる。
ファインダー周りを見ていこう。
ファインダー窓、採光窓は盛り上がりのある飾り窓となっている。これがM3の特徴である。
M2以降はコストダウンのためこの飾りが省かれ、すっきりとしたデザインだ。ちなみにこの個体は初期型のためファインダー窓下部にブライトフレーム視野枠切り替えレバーはない。
レンズを挟んで逆サイドを見ていこう。
画面中央部にある大きなレバーはセルフタイマーである。レバーを下げると小さなボタンがレバー裏に潜んでいることがわかる。そのボタンを押すことで、タイマーが作動するのだ。
セルフタイマー上部にある小さめのレバーは巻き戻しレバー。
これはフィルムを撮り切った後、フィルム巻き取り時に使用する。レバーを倒すことで、撮影時の巻き上げとは逆方向にフィルムを巻き取ることができるようになる。これにより巻き戻しノブが回せるようになるのだ。
ライカ初使用時はこの巻き上げレバーの存在を忘れがちである。私もそうだったと記憶している。レバーを倒さずに巻き戻しノブを回そうと思っても全く回らない。力任せに巻いてメカを壊さないように注意してほしい。
上部を見てみる。カメラ用語だと軍艦部か。
とてもシンプルだ。右からフィルムカウンター、巻き上げレバー、シャッタースピードダイヤルである。
シリアルナンバーが惜しく、また美しい。そしてこの数字がこの個体を手放せない理由の一つでもある。
ライカはシリアルナンバーで製造年数がわかる。この個体は1955年製だ。前期型となる。
前期型の特徴といえばダブルストローク。二回巻だ。クイッ、クイッっとリズムよく巻き上げる。一見面倒そうだが、一回巻の巻くスライド距離のことを考えると、短距離を二回巻くのも決して悪くない。一度試してほしい。
さらにシャッタースピードダイヤルが見慣れない数字だ。
B 1 2 5 10 25 50 100 250 500 1000
現在の倍数系列(1 2 4 8 15 30 60 125 250 500 1000)とは違う。250分の1より遅いシャッタースピードで、外部露出計から得た数字を正確にセットすることはできないので、そこは間を取るなりした目分量となる。しかし後期型は現在のカメラと同じ倍数系列のシャッタースピードなので神経質な方はそちらをお勧めする。
おまけの裏面写真。
ファインダーの中の世界はみなさんでお試しください。
0.91倍のファインダー倍率。これはファインダーを覗いても見えるものの大きさが実際とほぼ変わらないということ。
つまり両目を開けて見ても違和感がない。
現在のフラッグシップ一眼レフでも0.76や0.72倍である。このくらいになると、片目をつぶった方がファインダー像が見やすい。
さらに美しく浮かび上がるブライトフレーム、二重像。そしてライカ全機種で最も長い有効基長線からくるピント精度。
広角側のフレームがないのは物足りないが、写真の基本である50mmレンズを使うのであればこれ以上のレンジファインダーカメラはない。
ライカは外観も良いが、とりあえずフィルムを巻き上げ、シャッターを切って欲しい。
そしてあの音色を聴いてほしい。
それだけだ。