⚠️記事内に広告を含みます

JHS Notadumble、幻のペダルへ…生産終了の裏に隠された「回路の誤り」とは?

低価格ながらダンブルアンプの極上サウンドを再現すると、世界中のギタリストを熱狂させたJHSペダルズの「Notadumble」。

惜しまれつつも、この人気ペダルの生産中止がJHS公式YouTubeチャンネルで発表されました。しかし、その背後には単なる生産終了では終わらない、驚くべき真実が隠されていたのです。一体なぜ、これほど愛されたペダルが姿を消すことになったのでしょうか?

今回の記事では、Josh Scott氏自身が語った「回路の誤り」という衝撃の理由から、その詳細、そして今後の展望まで、幻のペダルとなるNotadumbleの全貌を徹底的に掘り下げていきます。

NOTADÜMBLËとは?

NOTADÜMBLËは、伝説的なDumbleアンプのサウンドを再現することを目指したDIYエフェクターキットです。このキットは、はんだ付け不要で組み立て可能で、以下の2つのチャンネルを備えています。

  • クリーンチャンネル(Clean):ジョン・メイヤー氏が所有する希少なDumble製ペダル「A Box Later」を基にした、パワフルなプリアンプバッファ。
  • ドライブチャンネル(Drive):サンタナやジョー・ボナマッサのようなバイオリンのようなサステインを持つオーバードライブサウンド。

価格は$119と手頃で、Dumbleアンプのサウンドを求めるギタリストにとって魅力的な選択肢となっていました。

JHS Notadumble、まさかの生産中止の理由とは?

JHSペダルズの看板モデルの一つであり、低価格ながらダンブルアンプ特有の極上のオーバードライブサウンドを再現すると多くのギタリストから絶賛されていた「Notadumble」。

その突然の生産中止の報は、コミュニティに大きな衝撃を与えました。この決定は、JHSペダルズの創設者であるJosh Scott氏が自身のYouTube公式チャンネルで直接発表したもので、その背景には驚くべき「回路の誤り」があったと説明されています。

当初、彼らが目指したのは、ジョン・メイヤーが愛用することで知られるDumble “A box later”アンプのクリーンチャンネルの回路を再現することでした。

しかし、リバースエンジニアリングの過程で意図せず、より希少でほとんど情報が出回っていないDumble BBC1ユニットの回路を誤って使用してしまっていたことが判明し、これが生産中止の直接的な引き金となりました。

回路の誤りが発覚した経緯

この回路の誤りは、Notadumbleのリリースからわずか2週間後に、意外な形で発覚しました。

Josh Scott氏が別のプロジェクト、具体的にはエフェクターのモディファイ(改造)に関するショートサーキット(短い回路)の講義準備を進めている最中のことでした。

その際、彼の主任エンジニアが「A box later」のエフェクトループに本来あるべき回路とは異なる、いくつかの矛盾点を発見したのです。

この指摘がきっかけとなり、徹底的な検証が行われた結果、Notadumbleに搭載されていたのが本来意図していた「A box later」の回路ではなく、Dumble BBC1の回路であったという衝撃の事実が明らかになりました。

開発段階での慎重な検証体制にもかかわらず、このようなミスの見落としがあったことは、Dumbleアンプの回路の複雑さと、それに伴う再現の難しさを物語っています。

Dumble “A box later”のエフェクトループとは?そして誤り発見の決定打

Dumbleアンプ、特にジョン・メイヤーが使用することで伝説的な存在となった「A box later」は、その特徴的なサウンドの一部を、非常にユニークなエフェクトループ設計に負っています。

このエフェクトループは、単なる信号の送り出しと戻しだけでなく、信号の整合性を保ち、外部エフェクターを接続してもアンプ本来のトーンが損なわれないように設計された、バッファード・エフェクトループの一種です。

Dumbleアンプは、そのドライブサウンドをプリアンプセクションで生成することが多いため、ディレイやリバーブといった時間系エフェクトを歪みの後段に接続する際に、信号の劣化や音質の変化を防ぐ高品質なループが必要とされます。Dumble “A box later”のエフェクトループは、クリーンな信号経路を維持しつつ、接続されたエフェクターのパフォーマンスを最大限に引き出すための、「センド(Send)」と「リターン(Return)」の明確な回路構成を持っています。

JHSペダルズのNotadumbleにおいて、このDumble “A box later”のエフェクトループの特性が、回路の誤りを発見する決定的な手がかりとなりました。Josh Scott氏がNotadumbleにJohn Mayerが使用する「A box later」のようなTRS(Tip-Ring-Sleeve)形式のエフェクトループを追加する改造方法を教えるためのショートサーキット(簡易回路)を計画していた時のことです。彼はヘッドエンジニアにNotadumbleの回路図を出力するよう依頼しましたが、そこでエンジニアは不可解な点に気づきました。

エンジニアは、Notadumbleの回路図には「A box later」のような適切なエフェクトループの「リターン」側のサポート回路が見当たらない、と指摘しました。彼は「A box later」のエフェクトループの詳細な情報を持っていませんでしたが、Dumbleアンプの特性から、通常はリターン側にポスト・リターン回路(信号を整えるための追加回路)が存在すると推測していました。彼が確認していたNotadumbleの回路図には、その明確なセンドとリターンを持つ「A box later」とは異なる構造が見て取れたのです。

このエンジニアの指摘、つまり「本来あるべきエフェクトループの構成、特にリターン側のサポート回路が見当たらない」という不整合が、Josh Scott氏に「もしかして、Notadumbleのクリーンチャンネルは、自分が思っていた『A box later』の回路ではないのかもしれない」という疑念を抱かせました。

この直感と、その後の詳しい調査によって、Notadumbleに実際に搭載されていたのが、意図していた「A box later」ではなく、より希少なDumble BBC1の回路であったという衝撃の事実が明らかになったのです。エフェクトループの設計における微妙ながらも決定的な違いが、ペダルの根本的な回路の誤りを暴き出す、まさに「灯台下暗し」のような出来事だったと言えるでしょう。

誤りが気づかれにくかった理由

これほどの大きな回路の誤りが、なぜ製品化され、市場に流通するまで気づかれなかったのでしょうか。

動画の中でJosh Scott氏は、その理由を詳細に説明しています。まず、両回路(BBC1と「A box later」)は、電気的な設計は異なるものの、サウンドのキャラクターや機能面で非常に似通っていたことが挙げられます。

そのため、テスターや開発者自身も、音色やレスポンスに決定的な違和感を抱きにくかったと推測されます。

さらに、Notadumbleに搭載されたBBC1回路の「input」と「output」のノブのラベルが、ジョン・メイヤーが所有する「A box later」のそれと全く同じ表記であったことも、混乱を招く要因となりました。

これにより、内部の回路が異なっても、見た目の操作性からは区別がつきにくく、検証作業において誤りが隠蔽されやすかったのです。

限られた部品と今後の展望

今回の生産中止は、回路の誤りという技術的な問題だけでなく、部品の供給状況も密接に関わっています。

JHSペダルズは、特定の部品の調達に際して関税の影響を受け、当初からNotadumble用の部品を約15,000台分しか確保していなかったとのことです。

既に相当数のNotadumbleが市場に出回っていることを考えると、残りの在庫は非常に限られており、この部品数の制約も生産中止の決断を後押しする形となりました。

しかし、今回の発表は終わりを意味するものではありません。Josh Scott氏は動画の中で、すでに「Notadumble Version 2」の開発に着手していることを示唆しており、詳細な情報やリリース時期は未定ながらも、新たなNotadumbleの登場に期待が高まっています。

今回の経験を経て、より正確で進化したダンブルサウンドがJHSペダルズから届けられることを、多くのギタリストが待ち望んでいることでしょう!